責任と犠牲に耐える巨人アトラス
スウェーデンの歌手、ソングライター、ミュージシャン、作曲家、パイプオルガン奏者のAnna von Hausswolffの6thアルバム『Iconoclasts』より『Facing Atlas』

I came to take you back
To where you came from
But that’s not what you want
あなたを連れ戻しに来た
あなたがもといた場所へ
でもそれはあなたが望むことではない
I fought so hard for you, for us
For our life here
But now you need to go
私は激しく闘った、あなたのため、私たちのため
私たちの今の生命のために
でも今あなたは行かなければならない
The world is full of shit and full of evil
But there you stand
You looked at me and begged me for some mercy
But I, I couldn’t take your hand
この世界は最悪と邪悪で溢れている
でもあなたはそこに立っている
あなたは私を見つめ、慈悲を乞うた
でも私は、私はあなたの手を取れなかった
So I came to take you back
To where you came from
But you see, that’s not what I want
あなたを連れ戻しに来た
あなたがもといた場所へ
でもそれはあなたが望むことではない
The foolish hope of great eternal beauty
This shit breaks my heart
愚かな希望、偉大なる永遠の美への
このでたらめが私の心を打ち砕く
Can we just run away
It’s no fun to stay
Can’t we just break free from ourselves
Deep in my crumbled chest
Kindness was at rest
Your hand reached out
And changed my soul
逃げることしかできない
留まることは喜びでない
自分自身から逃れられない
粉々になった私の胸の奥で
慈愛は静かに眠っていた
あなたの手が差し伸べられて
私の魂を変えた
crumble:腐る、滅びる、壊れる、崩れて粉々になる
at rest:休息して、安らいで、安心して、安静となって、安静時に 静止して、停止して、眠って、永眠して
パイプオルガンが付属するノルウェーのコンサートホール、Stavanger konserthusにて
2016年に開催されたOrgelkraft festivalでのライブ映像
プロジェクションマッピングと相まった幻想的なステージ
パイプオルガン奏者として教会でのライブも多い彼女ですが、その狂信的なスタイルと歌声で「悪魔を召喚する」とカトリック教徒の抗議を受けてライブが中止になったこともあるとか。『Iconoclasts』は「偶像破壊者」で、歌詞も現代社会の表層に潜む神聖な個人的象徴――献身、時間、依存、そして信念――を粉砕し、再構築を歌う内容となっており、そんな彼女に相応しい作品となっています。
アトラス(ラテン翻字: Atlās)は、ギリシャ神話に登場する神で、ゼウスたちオリンポスの神々との宇宙の支配をめぐる戦いに敗れ、計り知れぬほど重い天空を永遠に支えるように宣告された、「支える者」「耐える者」「歯向かう者」、「責任と犠牲の象徴」です。歌詞にも犠牲と重荷を背負うこと、それらに耐えて向かう新たな道への眼差しが感じられます。
大阪・関西万博のイタリアパビリオンで人気を集めた大理石の彫刻「ファルネーゼのアトラス」
今回のアルバムはこのパイプオルガンサウンドに、スウェーデンのサックス奏者・作曲家Otis Sandsjöの即興的な演奏が重なり、またIggy PopやEthel Cainとのエモーショナルなコラボ曲もあり、新たな世界観を生み出しています。是非日本のコンサートホールでも聴いてみたいです!
